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天蚕(てんさん)・やまこ

天蚕

絹糸の原料には大きく分けて家蚕(室内産)と野蚕(野生種)の2種類に分けられますが
野蚕の中でもひときわ綺麗な淡い緑色の繭だまを作る山繭蛾(やままゆが)がいます。
品種は、「天蚕(てんさん)」またの名を「やまこ」と呼びます。

「天蚕(てんさん)」は日本固有の山繭蛾の品種で古来より全国で飼育されておりましたので、もしかしたら皆さんのお住まいの都道府県でも発見出来るかもしれませんがどんどんその数は減りつつあるようです。


今回私が長野県安曇野地方を訪れた際に偶然知り合った天蚕飼育家の古田様ご夫婦のご好意により色々なお話を聞かせて頂き、少しでも多くの方にその「天蚕」の希少性や飼育する事の難しさを知って頂き、少しでもその維持にご協力出来ればと掲載させて頂きました。

天蚕まゆ天蚕繭

これが「天蚕(てんさん)」の繭だま。
この淡い緑色は天然の色なんです。天蚕は淡い緑色の糸を吐き出す山繭蛾なんです。

鳥類や動物に捕食されないようにクヌギの葉に隠せる保護色なのか!?
クヌギの枝につかまり葉をまるめて隠れるように繭だまをつくります。

この天蚕の繭だまから作り出す糸を天蚕糸(てんさんし)と言い、その美しい天然色と
光沢は多くの人を魅了します。


◎天蚕繭の一般的なサイズ

 繭の長さ  5~6cm
 繭の重さ  5~6g
 糸の太さ  約6デニール
 糸の長さ  500~600m

やまこの幼虫やまこ

この透き通るような綺麗な緑色の生態。これが天蚕の幼虫!意外にも水が好きらしい!
生育が難しく、鳥や動物に捕食される他にも、アリに噛まれてもクヌギの木にしがみつけなくなり
死んでしまうそうです。

そして一番驚いたのが、春先になると地面を炎で焼き、殺菌までされると言う事。
もちろん飼育場に入る前に靴の裏を殺菌するのもあたりまえ。
ここまでしても実際、菌により全滅もよくあるようです。

ちなみに天蚕の食する木の葉は、クヌギ、ナラ、カシワ、栗などの木の葉。


私が訪れた時期が6月後半。幼虫も一番大きな時期です。(5齢なので糸を吐き出す前)
※実はこの幼虫に出会う目的で時期も考えて訪れておりました。汗


気持ち悪いとお思いの方もおられるとは思いますが、、、
クヌギの枝に掴まっている幼虫。もうぷくっぷくで本当に可愛いです!
不思議と糸を吐き出すと聞くと私は可愛くなるんです。
でも聞かないともしかしたら無理かも!?

天蚕糸

鳥類や動物に捕食されないように飼育場には必ずネットをかぶせてあります。
しかも最近では特に野生のサルが好んで捕食するようでネットも昆虫の侵入を防ぐ目の細かいネットと動物に破られない頑丈なネットで2重にされています。
そして飼育小屋に入るときはネットを持ち上げてかがんで入らなくてはなりません。
これだけでも毎日大変だと思いませんか?

そしてネットを設置するだけでもおそらく重労働。なんせ飼育小屋は何件もありますから、、、
私ももっと近ければ喜んでお手伝いに行くのですが、片道350kmはちと遠いかも、、、。


写真の畑には及びませんが実は私も昨年より野蚕飼育の為、クヌギの苗木を購入して
植えております、、、が、しかし、場所がないので大き目の植木鉢で!(笑)
安曇野で野生のクヌギの苗木をゲットしてきたので頑張って3鉢に増やしました。

野蚕の幼虫野蚕

上側左の写真は飼育小屋の外側ですが同じクヌギの木。
たまたま探してみるとまさかの天蚕の幼虫がいる!?(さすがに遠目では解りません)
右側が一部分を拡大した写真ですが天蚕の幼虫がいるのを解りますか?
画像をクリックして頂くとさらに拡大しますので是非見てみてください!



野蚕の幼虫天蚕飼育用のクヌギの畑

写真左側の一般的な天蚕とは違うエメラルドグリーンに輝く繭だまは、古田様が飼育された
特別な天蚕の繭。意図的にこの色の繭だまを作り出せるというから驚きです。

右側が当方の飼育畑? 左より、クヌギ、クヌギ、クヌギ、コナラ、桑の木です。
安曇野でゲットしてきたクヌギ2本が小さすぎて見えない!?(笑)
もう少し木が大きくなれば天蚕を絶対に飼育してみたいです。
そして卵から幼虫そして山繭蛾になるまでの飼育日記を掲載したいです!



天蚕糸

左の写真が天蚕蛾の成虫(雌)です。羽根を広げると約12cmととっても大きいです。
また生育出来た時にはいっぱい撮影したいですね~!楽しみ~

場所が余ったのでちょっと小ネタ。右の写真は安曇野市の蓼川にある3連の水車。
なんと黒澤明監督の映画「夢」の撮影現場です。大王わさび農場の横にあります。




今回の安曇野の旅行では、京都では絶対に解らない天蚕の飼育の難しさ、大きな飼育場から
少量の天蚕繭だましか収穫出来ない大変さ、それゆえに出来上がった天蚕繭の存在の重さ
や貴重である事を身に染みて感じました。
(実際に飼育されている方にはそんな簡単なものではないと怒られるでしょうが、、、汗)



今回お世話になりました古田様ご夫妻は永年にわたり天蚕の飼育をされ、さらに 多くの方が
天蚕の飼育を継続出来るように勉強会などの行事も中心になって頑張っておられます。

普通なら絶対に見せて頂けない飼育畑を見せて頂きまして本当に本当に有難うございました。
西陣の糸屋も絹業に関わる者として今後もご協力していきたいと思っております。




と言うことでご夫婦が中心になって頑張っておられる学校のご紹介です。
天蚕の飼育に関わる勉強や糸作りなどを年間を通して体験出来るようです。
受付は春頃のようです。興味のある方は是非行って見て下さい。



やまこの学校(ホームページ)
お問い合わせはホームページよりお願い致します。

安曇野クラフトゲート匠の杜
〒399-8303 長野県安曇野市穂高5971番1 電話 090-4464-9771






こちら安曇野にある天蚕専門の展示施設です。
こちらは年間を通して見学も出来ます。



安曇野市天蚕センター(ホームページ)
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明3618-24 電話 0263-83-3835
(展示室もあり一般公開もされております。是非一度行ってください)



ワイルドシルク


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